この仕事をしていると、年に数艇の海外からやってくるクルージングヨットに関わる機会があります。
世界の各地から日本に立ち寄ってくる艇はどれもユニークで、セーラーも魅力的な方が多いので興味が尽きません。艇の修理や補修、補給品の手配から航路や寄港地のアドバイス、税関や検疫手続きの援助などなど、必要やご希望に合わせて対応する事になります。経験のない
事や、難しい頼まれ事にも出くわしますが、出来ない・判らないでは相手は困ると思うと、何とかしようという事になりますが、後になるとこれが良い勉強になっているのです。
私が関わる前に、日本の各地で何人もの人達と出会って、様々なおもてなしを受けていらっしゃいます。日本の港に初めて入って最後の港から出国するまで、日本特有の税関や海保の管理があり、プレジャーで日本を訪れるヨットは役所にとって特殊例のようで、面倒な事もあります。制度には疑問もありますが現場の担当官の方はたいがい丁寧で親切です。海外からのクルージングヨットにとって、日本の海や航路、寄港地などの必要な情報の入手は困難です。入国してからこれらの親切な人達からの情報や、同じ海外からのクルージングヨット同士の情報交換が役に立っているようです。インターネットを利用した情報収拾と通信は不可欠になっています。
写真のヨットは51フィートのイタリアからのスチール艇で、艇長は76歳のイタリア人でした。ノルウエイから出発して、カナダと北極の間の航路(北西航路)を通りベーリング海峡から太平洋に入り、南太平洋を巡って沖縄で
日本に来ました。35年の船齢の鉄船は北極や南極に行くには適していますがこれ程の年数を経ると外板の錆が心配になります。外板の一部を貼り直す必要があり、この工事を依頼されました。検査をすると6ミリの鉄板が部分によっては2ミリまで薄くなっていました。長期上架場所と工事会社を見つけるのに大変苦労しましたが、何とか対応して、送り出しました。この艇は2019年初夏に北海道を離日し、今度はロシアと北極の間の北東航路を経て無事に
ノルウエイに戻りました。極寒の海を航くためにコクピットテントはフレームとキャンバスの補修も実施したのですが、無事に航海を達成した事を聞いて、心からホッとしました。
沖縄から入国し、瀬戸内海などをクルージングして冬前に船を長期繋留(大阪湾の淡輪YHが人気です)して、冬季は一旦国に帰って春先に戻ってくる。再度出港準備をして5月期にアラスカに向けて出発するパターンが増えています。出発地はさまざまでも南太平洋を巡り、日本ーアラスカーカナダー米国西海岸を経るコースが人気なのです。
2013年から始まった瀬戸内国際ヨットラリーが切っ掛けになっていると思われます。
プロポーズをしたらヨットで住む事を条件に出されて、それ以来二人の住処は40フィートの木造艇。世界をクルージングしながら先々でレースにも参加している(シドニーホバートレースにも参加)英国のヨットにも出会いました。もちろん艇長は結婚の条件を出した奥様でした。
カップルが多い事にも感心させられます。日本をクルージングしていると年長のシングルハンドセーラーばかりに出会う、どうして奥さんが一緒じゃないの?とよく聞かれます。説明すると寂しくなるので困ってしまいます。
どのセーラーもユニークでタフ、魅力的な人ばかりです。そして世界のセーリングコミュニティーは素晴らしいと感じます。ヨットをやってきて良かったと心から思います。
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